2017.11.02 閃3の「黒の史書3」を追加
閃の軌跡3で追加されたレポートも書き足していきます。
~目次~
- 【黒の史書①】『創生の巨神たち』
- 【黒の史書②】『廃都の暗黒竜』
- 【黒の史書③】『獅子戦役・勃発』
- 【黒の史書④】『ドライケルス挙兵』
- 【黒の史書⑤】『獅子戦役・終結』
- (閃2・2周目限定)屋上のイベント
- 閃3【黒の史書②】『魔煌の傀儡兵』 S0527 NEW!!
- 閃3【黒の史書③】『槍の聖女・前日譚』 S0942 NEW!!
- 閃3【黒の史書④】『獅子心皇帝・後日譚』 S0994 NEW!!
- 閃3【黒の史書⑥】『導力停止現象』 S1203 NEW!!
黒の史書解読レポート
七耀歴以前。
初めに二柱の巨神があった。
一つは猛(たけ)き力の担い手にて、
一つは靱(つよ)き力の担い手であった。
共に天(そら)より眷属らと降臨し――
かの暗黒の地にて邂逅を遂げる。その性(さが)ゆえ、双神、相容れず――
天地を揺るがす戦いが切って落とされた。
女神と精霊たちの嘆きも空しく、
大地は震え、天は引き裂かれ――
眷属たちはただ畏れ戦くのみだった。そして千日に渡る戦いの末――
二柱の巨神は、終わりの日に相討ちとなった。
全ての力を亡くした虚ろなる器は、
それぞれ暗黒の地の外れへと弾き飛ばされた。
大地に痛ましい傷痕と、取り残された眷属と――――”巨イナルチカラ”を残して。
※史書③でエレボニアのことを暗黒の地とする表現があったから、ここでの「かの暗黒の地」っていうのはやはりエレボニアのことなんだろう。
※暗黒の地の外れという表現がどうもノルドの巨像を想像させるんだが…。
※関係ないかも知れないけど終わりの日に相討ちという表現がまるで猟兵王と闘神の一騎打ちみたいだね…。
【黒の史書②】『廃都の暗黒竜』
七耀歴371年
帝都ヘイムダルが開かれてより二百年――”その災厄”は突如、地の底から顕れた。
――≪暗黒竜≫ゾロ=アグルーガ。黒き瘴気を撒き散らす恐るべき魔竜である。
魔竜の吐き出した瘴気は帝都を覆い尽くし、ヘイムダルは死の都と化した。
死者は冒涜され、魔竜に操られたまま徘徊し、生ある者に襲いかかって眷属を増やしていった。この事態に、時の皇帝アストリウスⅡ世は民と臣下を引き連れてヘイムダルから逃れ、南のセントアークの地に仮の都を構えたのである。
――百年の時が過ぎ、七代後の皇帝ヘクトルⅠ世が、廃都と化したヘイムダルの奪還を決意する。
既にヘイムダル周辺の地は魔によって呑み込まれ、暗黒竜の支配下となっていた。
ヘクトルⅠ世は勇猛なる騎士団を率いて攻略するが、強大な魔物の群れに阻まれ、苦戦を強いられてしまう。そんな中、ヘクトルⅠ世は”ある存在”と邂逅した。巨いなる緋色の騎士――≪テスタ=ロッサ≫。
ヘクトルⅠ世を主に迎えた緋色の騎士は、圧倒的な力と無数の武具をもって廃都へと突き進み、全ての元凶たる暗黒竜と対峙する。
そして激闘の末――緋色の騎士は暗黒竜を見事調伏したのだった。しかし代償は大きく――暗黒竜の穢れた血によって皇帝は命を落とし、緋色の騎士は呪われた存在となった。
“千の武器を持つ魔人”――皇帝家の血筋にのみ反応し、暴走したら最後、地上の全てを呑み込みかねない”真紅の災厄”。
結局”それ”は、帝都の地下深く、日の光の差し込まぬ何処かへと封印されたのだった。そして、崩落した廃都の街並みを覆い隠すようにして新たな都の造営が行われ、民も再び集まるようになった。
現在の≪緋の帝都≫――ヘイムダルの街並みはこの時からのものだと伝えられている。
※ということはヘイムダルは171年頃に開かれた?
※ということは471年頃、7代後のヘクトルⅠ世が奪還決意。
※なるほど…だからテスタロッサは呪われているのね。
【黒の史書③】『獅子戦役・勃発』
七耀歴947年
七耀歴947年、皇帝ヴァリウスⅤ世の逝去と同時に帝国史上最大規模と言われる”内乱”が幕を上げた。
当時、ヴァリウスⅤ世は艶福家として知られ、何人もの妃・側室を持っていたと伝えられている。
しかしそれらの妃たちは、帝国各地の大貴族の出身で、彼らの帝国における覇権争いを如実に映し出すものだった。
そして――皇帝逝去から数日後、正妃の息子だった皇太子マンフレートが何者かの手で暗殺されてしまう。その直後、第二妃の息子であった第四皇子オルトロスが武力をもって帝都ヘイムダルを掌握――
反対派を徹底的に粛正した上で、”即位”を宣言して皇帝を名乗ったのである。
それを受け、母を異にする他の三名の皇子たちもまたそれぞれ母方の大貴族たちの支援を受けて”即位”を宣言。
ここに5年に渡る血みどろの内乱――≪獅子戦役≫が幕を上げた。――当初、各陣営の戦力は拮抗していたが、後の世に≪偽帝≫と呼ばれたオルトロス皇子の陣営は帝都に封印された”ある存在”の復活に成功する。
かつて魔竜を討ち、その返り血を浴びて呪われた巨いなる緋色の騎士――≪テスタ=ロッサ≫。
“千の武器を持つ魔人”の異名を持つその存在によってオルトロス陣営は圧倒的な武力を手に入れ、剛力無双として知られていた第五皇子グンナルの軍勢を撃破――そのまま他の陣営も呑み込むかと思われたが、同じ頃、末弟たる第六皇子ルキウスの陣営でも動きがあった。
新たなる”巨いなる騎士”――≪紫紺の騎士≫が陣営に加わったのである。
その力を持ってルキウス皇子は、策謀家として知られる第二皇子アルベルトの軍勢を打ち破り、オルトロス陣営に対抗する武力を手に入れたのだった。
しかし、一度破れたグンナル皇子とアルベルト皇子もまた、共同戦線を張った上で二陣営に対抗する。超常的な力を手に入れた二陣営と、最大規模の軍勢を擁する一陣営による”三つ巴”という戦況への推移――
≪獅子戦役≫勃発から2年にして内乱は混迷と激化の一途を辿り、帝国は正にその名の通り、”暗闇(エレボス)”へと呑み込まれて行ったのである。
※まとめると、第一皇子が正妃の息子で暗殺された皇太子のマンフレート。第二皇子が策謀家のアルベルト。第三皇子が庶子のドライケルス。第四皇子が第二妃の息子でオルトロス。第五皇子が剛力無双として知られる軍勢を有するグンナル。第六皇子が末弟のルキウス。
※騎神は緋色がオルトロス陣営(グンナル陣営を呑み込む)、紫紺がルキウス・アルベルト陣営。まだ出てきていないが灰色がドライケルス陣営か。
※グンナル軍か、っていう話があったな。焼き討ちされた村をみたときのドライケルス皇子のセリフかな。
※エレボニアって、名前の元が「暗闇」…エレボスなのか…。どんな命名だよ…大丈夫かよ…。ギリシャ神話の地下世界を指す存在か。地下の暗黒の神。地下の暗黒と上天の光明が表裏一体ということはコレは裏のほうってことだな…。
【黒の史書④】『ドライケルス挙兵』
七耀歴949年
のどかな草原で昼寝をする青年がいる。
周りでは羊が草を食み、のんびりと悠久の風を満喫する。
そこに険しい表情で、騎士装束の青年が馬を走らせてきた。よく見れば、甲冑には無数の刀傷と矢傷が穿たれ、左腕には痛々しい包帯が巻かれている。
数年ぶりの再会――しかしそこに懐かしむ空気はなかった。
「お前の言っていた通りだ」
「このままでは帝国は滅びる――」そうかと身を起こす青年。
彼こそが放浪に身をやつした帝国の皇子、第三皇子ドライケルス・ライゼ・アルノールであった。
――庶出の皇子として生まれたドライケルスは、他の帝位継承者たちから疎まれ、各地を転々としてきた。そして3年前からは異郷の地ノルドに身を寄せていた。天性の大人物であり、すっかり打ち解け暢気に暮らしている。だが全てを忘れたわけではなかった。
放浪する中で母は死んだ。ドライケルスは母が言い聞かせた言葉をよく覚えている。
「貴方の血は、帝国の不幸を決して見逃さない」
幼くして1人になった皇子は、何年も己に問い続けてきた。放浪の、何の力も持たない自分に出来ることはあるのかと。報せは内戦の拡大と、帝国が着実に滅亡への道を歩んでいることを示していた。
母の言葉は恐らく正しかったのだろう。これ以上は見過ごせないと、皇子は出立を決意する。
――ノルドの集落で旅立ちの支度をするドライケルス。
傍らには報せを持ってきた青年騎士ロラン――ドライケルスの幼馴染にして悪友であり、異郷の地に旅立つ前に、後事を託していた腹心の部下でもあった。そこに十字槍を携えた長身のノルド戦士たちが顔を出す。
彼らもまた、皇子とは親友とも言える間柄であり、お前たちだけでは心配だと、当然のように同行を申し出た。
翌朝、集落の外れで旅装束の男たちが見送られていた。皇子はノルドの民に別れを告げ、長老が祝福の言葉を贈る。
『風と女神の加護を――行ってくるがよい』
七耀歴949年秋、ドライケルス軍ノルドの地にて挙兵――手勢はわずか17名であった。
※17名という部分が今回の夢幻回廊の仲間の数(リィンを除く)と等しいという指摘もある。
【黒の史書⑤】『獅子戦役・終結』
七耀歴952年
七耀歴952年・7月――5年に渡って続いた内乱『獅子戦役』は終結した。
“緋色”と”紫紺”という≪巨いなる騎士≫を手に入れた第四皇子・オルトロス陣営と、第六皇子・ルキウス陣営。
彼らに対抗すべく、”魔導”の力で動くゴーレムまで手に入れた第五皇子グンナルと第二皇子アルベルトの陣営――
しかし争いを制したのは、内乱の中盤で立ち上がった庶出の第三皇子・ドライケルス陣営だった。ノルドの地で挙兵したドライケルス皇子は、内戦の最中、腹心の部下であるロランを亡くし、その直後――とある人物と運命の邂逅を果たす。
湖畔の街レグラムで立ち上がったサンドロット伯爵家の娘。
神がかった槍技と、圧倒的カリスマをもって一騎当千の勇士たちが集う≪鉄騎隊≫を率いていた戦乙女。
≪槍の聖女≫――リアンヌ・サンドロットその人である。放浪の皇子と救国の聖女――
生まれも違えば背景も違う二人に共通していたのは戦火に苦しむ民への思いやりと、争いそのものを終わらせようという強い意志だった。
そして、その想いこそが二人を戦場で引き合わせ、互いに手を取り合わせたのである。
≪鉄騎隊≫とノルドの騎士団、そして彼らに共鳴した心ある人々の助けを借りて、皇子と聖女は各地を解放し――遂には≪紫紺の騎士≫を擁する末弟・ルキウス皇子の心すら動かし、内戦終結に向けて大きな一歩を踏み出した。
――しかし時を同じくして≪偽帝≫オルトロスが、呪われし緋色の騎士――≪千の武器を持つ魔人≫をいかなる術をもってか”神”の域まで昇華させてしまう。
≪緋(あか)き終焉の魔王≫――
巨大な魔城と共にヘイムダルに出現した≪魔神≫は、帝都に迫りつつあったグンナル・アルベルト連合軍をただ一度の戦いによって壊滅――いや”消滅”させてしまう。そして魔神は紫紺の騎士をも打ち砕き――魔城を中心に放射状に伸びていった無数の紅き霊脈は帝都やその周辺の人々の精気を奪っていった。
絶体絶命の窮地に陥るドライケルス皇子と槍の聖女。――それでも彼らは諦めなかった。
彼らに協力していた”善き魔女”の導きに従い、帝都近郊の地で新たな”巨いなる騎士”と邂逅――
試練の末に≪灰色の騎士≫の力を手に入れたのである。そして、鉄騎隊とノルドの騎士団、各地の協力者やルキウス陣営が力を合わせて帝都への血路を切り拓き――
皇子と聖女は≪灰色の騎士≫を駆って紅蓮の魔城へと挑む。
――魔城が消滅し、帝都が解放されたのはその三日後。
七耀歴952年、7月4日のことだった。
※ヴァリマールが眠りについたのは250年前と128日前…12/30から逆算すると、954年の8月24日ってことになるな。帝都解放から2年と1ヶ月と20日経過しとる。しかも帝都近郊ってことはもともとトリスタに試練の場所があったってことか…?
トマス教官は聖杯騎士団所属・守護騎士第二位≪匣使い≫トマス・ライサンダー。騎士団の副長か…。ロジーヌはライサンダー卿をサポートする従騎士。
「今回の事件はまだ何も終わっていない」
黒の史書については、「かなり特殊な古代遺物」「騎神に関わる真の歴史を記述していく働きがあるようです」。
「かつて帝国の地に存在していた”2つの至宝”の謎……」
「そして地精と魔女によって造られた≪七の騎神≫という仕組み」
これについては教会もまだ把握し切れていないのか。バルクホルンは西部担当なのね。
さて、この辺りを整理すると、空3rdに相当する続編が出てくることは間違いなし。
そして、”2つの至宝”と言っていることから、最初の「二柱の巨神」が2つの至宝なのではないかと思われる。
「猛(たけ)き力の担い手」と「靱(つよ)き力の担い手」という2つの至宝が魔女の眷属らと降りたってエレボニアで邂逅を遂げる…が、相容れない性質であったので「女神と精霊たちの嘆きも空しく」という部分も気になる。
レグラム(水)、ノルド(風)、ケルディック(地)という配置、そして火霊窟の特殊性を考慮すると、やはり至宝のどちらかは火だったんじゃないかな?そして残る上位三属性の時がもう一つだったんじゃないかなと思ったり。うーん…都合なのかどうなのか… →閃3で「火」と「地」と判明
まあちなみに氷霊窟はというと、「これまでとは次元の違う相手」、「試練」のはずだが「ゼムリアストーンは結晶化されていない」、「ここは本来顕れるはずのなかった場所なのかもしれない」、「帝国の歪みに影響されて、暴走した試練だけが顕現した」、というわけで夢幻回廊と同じ状態なのかもしれない。参考にならず。
七の騎神について。
・緋色の騎神 テスタ=ロッサ(ヘイムダル)
・紫紺の騎神 (場所不明。もしやローエングリン城?) →閃3で違うと判明
・蒼の騎神 オルディーネ(オルディス)
・灰の騎神 ヴァリマール(トリスタ)
の四種類が確認されていることから、あと三体は存在している模様。
ふう。現時点ではどうしようもないので、とりあえず後で年表を更新するとします。
閃の軌跡Ⅲ 黒の史書追加分
※入手は2章(2番目)
かのヘクトル帝による帝都奪還より150年、
帝権は安定を見せながらも、帝国各地で豪族が出現し、
ゆるやかに領邦としての容を取るようになっていた。豪族たちは皇帝に貴族と認められつつ、
しだいに競うようにして互いの領土を奪い合うようになり、
小規模な戦いが各地で無数に繰り返されるようになった。そんな中――ヘクトル帝が迎えた”緋”と同種の
”巨いなる騎士”が各地で見出され、時に争いに使われた。蒼・紫・灰・銀・金――それらは暗黒時代前期において
それぞれの豪族たちが持ち得た戦力を遥かにしのぎ、
圧倒的な力を振るって兵たちを駆逐し、戦の趨勢を決した。しかし”巨いなる騎士”は天変地異のようなものであり、
有力な豪族が力とミラに飽かせて迎えられるわけでもなく、
その意味で”何らかの対抗手段”が求められたのである。――そこに登場したのが、当時の魔導兵たちによって
幾つも産み出された魔導の傀儡≪魔煌兵≫であった。他の地域同様、暗黒時代の帝国の魔導師たちは
崩壊したゼムリア時代における奇蹟と栄光を追い求め、
その再現を成し遂げようという妄執に取り憑かれていた。そこに有力豪族たちがミラを出し、ある勢力の助力もあって
”巨いなる騎士”に対抗する魔煌兵が幾つも造られたのである。――実際の所、魔煌兵の多くは不完全で、霊脈が活性化
している時しか動かせないという致命的な欠陥を抱えていた。しかし、”巨いなる騎士”が顕れる時は大抵、
霊脈が乱れて活性化していることが殆どであったため、”対抗手段”としてはある程度成立していたと言えるだろう。
――七耀歴527年、魔煌兵の原型とも言える最初の傀儡が、
今は亡き北部の有力豪族に仕えた魔導師の工房で誕生する。名を≪オル=ガディア≫――全高5アージュほどの
後の魔煌兵よりもやや小さい”首なし”の甲冑傀儡であり、
その後の魔導師たちの試行錯誤の跡を垣間見ることができる。
※入手は3章(4番目)
仄暗い地下の一角で、二つの影が篝火に照らされて揺れる。
「なるほど……圧倒的な”気”を感じますね」
戦闘に立つのはしなやかな肢体を持つ、うら若き乙女ーー
黄金を溶かした麗しき髪を、地下に流れる風になびかせ、
その細腕には不釣り合いなほどの長さの槍を携えている。「なんじゃ、やはり止めるか?」
「それがよかろう、人の子には過ぎた力ゆえな」そう応えたのは古風な語り口の人物ーー
肉感的な死体を長衣に包み、焔揺らめく杖を手にした、
くすんだ金髪と緋い瞳を持つ妙齢の女であった。乙女はまさかと首を振り、眼前の”扉”を開くよう女に頼む。
扉には、螺旋をまとった十字のような紋章が刻まれていた。ーー乙女の名は、リアンヌ・サンドロット。
レグラム地方、ローエングリン城を治める伯爵家の娘にして
後の世に、≪槍の聖女≫と呼ばれるようになる少女である。武術盛んなレグラムの地で育った彼女はその可憐な要望とは裏腹に、幼少より天賦の才を発揮し、
15にして城の騎士たちを凌いで栄冠に輝くほどであった。騎士たちも守るべき姫の天禀に驚嘆し、父である伯爵の
溜息と裏腹に、圧倒的な支持と崇拝を彼女に捧げるのだった。……そんな彼女は16歳の時、ある”声”を聞く。
厳かで鷹揚ながらもどこか冷たくも響くような”声”。
その声はリアンヌに、彼女が果たすべき使命と
受け入れるべき宿命について囁き、何かを促すのだった。声は彼女以外には聞こえず、流石に悩むリアンヌだったが
そこに現れたのは”魔女”を名乗る不思議な女性だった。魔女はその声が、かつて城の地下に封じられた
”とある存在”のものであり、
己が主としてリアンヌを求めていることを告げる。ーーそれが圧倒的な存在であり、手に入れたが最後、
大いなる力と同時に、破滅をもたらす危険があることも。しかしリアンヌは迷い悩んだすえ、
試練の果て、その存在と対面することを決断する。争い続ける有力貴族たちに奪われて利用されぬため、
永く続く戦乱の世を終わらせる”切り札”とするために。応えを聞いて驚く魔女だったが、リアンヌの
私心なき決意と魂を認め、遂には協力を申し出るのだった。かくして扉は開かれ、槍の乙女と焔の魔女は試練に挑み……
ーーその5年後、時の皇帝が崩御したことで、
帝国史上最大規模と言われる内乱≪獅子戦役≫が勃発する。
※入手は3章(3番目)
「すまぬな、もう下がってよいぞ」
「は、何かありましたらお声掛けください」
壮年の執事長が一礼して退出し、
”彼”はそっとため息をつきながらベッドに背を預ける。”彼”は年老い、病んでいたーー
鍛え抜かれた体躯は、いまだ些かも衰えておらず、
大抵の者はその壮健ぶりを疑いすらしないであろう。しかし”彼”は確実に老い、衰え、最期を予感していた。
ーー七十歳を迎えた第73代皇帝、
獅子心皇帝ドライケルス・ライゼ・アルノールは。
5年に渡る内戦≪獅子戦役≫終結から40年あまり、
ドライケルスは一時も休むことなく走り続けてきた。終戦の年に即位し、ノルドの友や魔女と別れを惜しみつつ、
臣下となった仲間たちと帝国の復興にひたすら尽くした。(ーー悔いはないはずだ)
(子らも心配いらぬだろう……)かつての想いを振り切るように妃も娶った。
内戦中、彼を支えながら謀殺された侯爵の息女で
年の離れた妹のような存在だったが、ひたむきに慕い続けて
くる姿に心動かされて妃に迎え、後に二男二女をもうけた。その妃も数年前に亡くしたが、息子と娘たちは壮健で
復興を遂げた帝国の未来を担ってくれると確信している。(後進も育っている……)
内戦の前半、彼をかばって命を落とした腹心にして親友、
ロラン・ヴァンダールの忘れ形見の成長を見届けられたのも
彼にとっては満足いくことだった。既に四十代、軍の要職に就きながら武術師範や
守護職として活躍する彼は、もう一人の息子そのものだった。そして≪トールズ士官学院≫ーー
かつて仲間たちと語り合った、身分を問わぬ軍学校についても
20年前に設立し、既に優秀な卒業生を数多く輩出していた。(”彼”も驚くであろうな……)
終戦の年、別れを惜しみつつ永き眠りについた
戦友(とも)のことを思い出して、口元に笑みを浮かべる。士官学院が建てられたのは、まさに”彼”を見出し、
再び”彼”が眠りについた地だったのである。(ならば余の生も無駄ではなかったのであろう)
(女神の迎えが来るまでに”あれ”を凌げればだが……)ふと無感動に部屋の片隅を見やる。
そこには名状しがたき”闇”がうずくまっていた。
『ーーーーーーーーーーーー』
それは今日も繰り返し、飽くことなく語りかけてくる。
乞うように哀れに。
脅すように猛々しく。
誘うように密やかに。その招待を彼は知っていた。
40年前、帝位を継いだその日から。(幸いなのは子や末裔(すえ)には祟らぬことか……)
そしてーー今日もまた、獅子の心を持つ男でなければ
到底耐えきれぬような苦痛と絶望の時間が始まるのだった。「……ドライケルス?」
ーー懐かしい、あまりに懐かしい鈴のような声と共に
黄金を熔かした髪をなぎかせた”その人”が顕れるまでは。
※入手は1番目(1章)
七耀歴1203年2月――サザーラント州の最南部、
パルム市とタイタス門周辺で”導力の停止現象”が発生した。折しも真冬の時期、例年よりも暖冬だったとはいえ、
照明・通信・暖房器具などの導力機器が使用不能となり――紡績町パルムの住民は一週間に渡って寒さと夜の暗闇に震え、
現地のサザーラント領邦軍は対応に追われることとなった。原因については南の隣国、リベール王国の中央部に位置する
ヴァレリア湖上空に出現した”浮遊都市”と目されている。全長5000アージュ、全幅3000アージュにもなる
ゼムリア時代のその古代都市は、リベールのほぼ全域から
導力を吸収するという超越的な力を発揮し――その範囲内に帝国南部の一地域まで入ってしまったのが
導力停止現象が発生した”原因”であった。――異変から3日後、正規軍第三機甲師団は
ドレックノール要塞から驚くべき早さでパルムに到着、
現地住民を保護しつつ、タイタス門を越えて国境へと至る。第三機甲師団が擁していたのは大量の蒸気戦車――
現役を退いた旧式戦車に、蒸気の力を利用する外燃機関を
搭載した”導力”に頼らず稼働する改造戦車だったのである。その主砲も導力式ではなく旧時代の火薬が使用され、
運用自体は難しいものの十分”実用”に耐えうるものだった。第三機甲師団を率いるのはゼクス・ヴァンダール中将――
皇室守護職の一門に連なり、正規軍内で中立の穏健派として
知られる智将は、進軍しつつも強烈な違和感を感じていた。『導力が停止した南部地域の住民を保護しつつ、
混乱の極みにあるリベールの治安を主導的に回復せよ』明らかに”侵攻”としか受け取れない政府の指令書。
異変の一ヶ月前に、政府から直接、蒸気戦車などという
現行戦車よりも劣る改造兵器の運用を押し付けられたこと。そして第三師団に続いて、同じく蒸気戦車を配備した
数個師団がリベール国境を目指しているという状況……。――最終的に、ユーゲント皇帝が一子、オリヴァルト皇子と
リベール軍総司令カシウス・ブライト准将の機転によって
帝国軍の介入は一時的に保留となった。そして王国の飛行巡洋艦≪白き翼≫が向かったことで
浮遊都市の機能は停止し、南部の導力停止現象も収まって、
帝国とリベールの緊張も終了したかに思われたが……。異変を主導したと目される結社の使徒≪白面≫が、
何らかのファクターを通じて帝国軍情報局と連動していたのは
一部の関係者の目には最早明らかであった。―――なお、≪白面≫が使用していた
自律制御型の小型兵装は、≪戦術殻≫と呼称されている。