博士後期課程の試験と合格方法について

※この記事は2015年のリライトです。

博士後期課程の試験と合格方法について、もちろん大学院によって異なるけど興味本位で調べてみたら、知恵袋に絶望を呼ぶような回答が並んでいて思わず爆笑してしまった。

「博士後期試験の語学試験では落ちないから修論の中身が悪かったのでは無いか?」とか。

ええ、そんなことないよ!!落ちるよ!!うちの研究科は毎年半分は落ちてたよ!!

そこで、文系の博士後期入試というめっちゃ需要のない話を書くことにした。

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文系の博士後期課程(ドクター)入試について

まず、博士後期試験の入試(文系)について基本的にまとめると、だいたいどの大学でも

  • 英語及び第二外国語(学問によっては古文が第二外国語枠に認められることがある)
  • 面接諮問
  • 外部受験者は修論審査

となっております。

私も、「英語・ドイツ語」+「面接」でした。

まあ、某大学院の某研究科の博士入試では、文系ですが語学は一科目なのだそうです。

試験問題とか難易度とかそういったものは大学によって本当に違うので、ネットの海で聞くより、自分の入りたい研究科の先輩に聞きましょう。

本当に現地人(在学生、OBOG、教員)に聞くのが一番です。

だって…20年分の過去問を代々紙で受け継いでいるとか、今年の入試問題はあの先生が作っているとか、中の人しかわからないことがありますからね!!

なぜ内部進学の学生にも語学試験を課すのか?

うちの先生達がいうには

「なぜ語学試験があるのかって?ここでテストでも設けないと、どうせきみたちこの先勉強しないでしょ」と。

ウッ…おっしゃるとおりです…ッ。

入ってからわかることですが、ここできちんと語学の勉強をしておくことで、外国語論文を理解する質が上がります。

なので先生方は某大学院の英語のみで入れる試験について、院生の外国語論文を理解する力が落ちるのではないだろうかと危惧していました。

多分英語のみにすることで、就職の厳しい法科大学院組に門戸を開こうという狙いがあるんじゃないかなと感じています。

うちの大学でも、法科大学院組の博士入試を免除しろとか緩和しろという圧力があったな~。

先生方は「英語+リサーチペーパーでいいよ、ただし司法修習が終わってる人だけね^ー^」という真っ向対立を選んでおりましたが…。

だって司法修習が終わってる人って、弁護士なるか研究者なるかだったら弁護士なるじゃないっすか。

司法試験落ちたから研究者なるか~みたいな人に来られても困る。だから司法修習終わってるけど研究やりたいという人だけにした。普通は弁護士になるからこの枠で来る人なんてめったに居ない^^って言ってたからね…。

試験には伝統がある。

また、別の某大学某研究科では、英語を選んではいけないという伝統があるとか。

なんでも、大学自体が創立の都合上英語への強いプライドをもっているので英語がやたらと難しいのだそうです。

新たに勉強してでも英語を回避するのが近道であるといっていました。それで、英語とドイツ語の人が、あえてフランス語を勉強して独仏で試験を受けたと聞きました。

本当に大学によって違うので、まずは情報を現地(その大学院のその研究科)で暮らす人間から聞くのが一番でしょう。

修論審査について

外部の大学院からくる場合は、修士論文の審査が行われます。

内部上がりは、修論担当した教授がそのまま指導教授であることが多いので、修論審査は、あるけど実際はほぼノータッチ、または、免除ですね。

うちの大学院では、内部であっても評価がA以上でないと博士後期課程を受けられないという裏のルールが存在します。大学院どころか教授によって合格基準は異なるので、内部にあがるにせよ外部にいくにせよ、修士論文はきちんとしたものを作成しておくべきでしょう。

修士論文は、お作法がきちんとできているか、形が整っているか…つまり、ルールにのっとっているかがチェックされる重要ポイントになります。

後期課程以上に求められる独創性…オリジナリティはあって損は無いけどなくても大丈夫なので、とにかくその分野の学問について正確な分析ができれば大丈夫だと思います。

博士後期課程の語学入試について

これもその分野によりますが、少なくとも「語学で落ちないなんてことはない」です。

しかも、英語で落ちないことはないなんてことはもっとないです。実はうちの研究科では、ほとんど落ちてる人間は英語で落ちています。ドイツ語やフランス語は真面目にやってるのに英語はなんとなくで過ごしてきたから、いざ全文和訳してみると英語のほうが日本語にしづらくて点数がとれないってわけです。

大学院は大変狭い世界で、人間も少ない場所。もはや、知恵袋で質問することがまず解決方法として間違っているとしかいえません。

まずは、受ける予定の大学の大学院事務室へいって聞くこと、過去問は研究科や研究室の先輩達からもらうことが必要です。私も先輩にもらった過去問が20年分くらいありましたが(これも先輩方がまた裏でひっそりと代々伝えてきた物)、問題制作者が途中で変わっているので、最近5年分しか勉強しませんでした。

勉強方法も考えなくてはいけなくて、大学までのテストとは異なり、うちでは修士の入試からして全文和訳しか出ないテストでした。ですから、どんなにわかった感があっても日本語に訳せなければ意味が無かったのです。

しかも、採点基準として、「やる気」が評価されることは口伝されていて、「とにかくよくわからない一文があってもさいごまで訳す」のが大切なのだとされています。うちでは。

単語について

修士のとき、外部からきた子は、Duoをやって単語力をつけたそうですが、博士ともなると、狭い世界過ぎて単語帳もないし、自分でなんとかするしかありません。

理系だと理系英語みたいな本が割とでてますが、うちの学問はどうも方法論を外に漏らさないタチのようで本が全然ありません。

しかも何を基準にしたかったのかまったくわからんのですが、加点条件が英検1級orTOEIC800点で、たったの10点だったかな…。

指導教授もそれを知らなかったらしくて、「え、英検1級で10点?え、もっとあげてもいいんじゃ?!」と言っていました。

この加点条件作った側も基準がよくわかんなくて適当につくったんでしょうね。ええ。

結局、私がやったのは、高校までのやり方で、自分にとって一番丸暗記できる方法でした。

ルーズリーフに本文を書き写し、重要な単語に下線をひいてオレンジのペンで意味を添え、訳は本文の下にオレンジで書く。そして赤シートをかぶせるとすべて消えるという伝統的古典的な学習方法です(笑)女子校ではだれもがやっていました。これで文章ごと単語の用法ごとたたき込んでなんとか乗り切りました。

ちなみに先輩はこんなにガチでやらずに雰囲気で乗り切ったみたいなので全く参考になりませんでした。

そして最初、単語カード形式のアプリで英独あわせて8000語ほど根性で頭にたたき込みましたが、文章中で出てきても意味があわなかったりして、結局意味がありませんでした。文章中で出てきて正しく文意に合うように使えなければ意味が無かったのです。

まあ、博士後期課程に進むというのは、とりあえず私の学問においては、人間をやめて博士という生き物になることだと思っています。

追記2018年

私は法学のドクターからシステムエンジニアになって、さらに現在はWebデザイナーをやっています。

その経験を踏まえ…、文系博士に進もうとする人がいるならば以下の点を理解しておくとよいと思います。

  • 一般的な社会人や裕福な人と自分の懐や立場を比較しないように努めること。
    親のすねをかじることを恥と思ったりしないこと。
    そもそも文系博士はお金に余裕のある人が来る場所だと思っておくこと。
  • 日本学術振興会…いわゆる学振は理系と比べるとはるかに受からないので落ちる前提で毎年申し込むと良い。
    (某先輩は卒業する8年目で初めてもらえたそうです)
  • 美味しい話を逃さないコネを大切にすること。
  • なんでも経験だと思って積極的に手を…挙げてはいけない!自分の研究時間が減るようなことにはなるべく近寄らない。
    (ずるい先輩とかが雑用を押し付けてくることがある)
  • 自分のペースでかまわないからとにかくちゃんと論文を生産して、発表する機会を得ること。
  • 先生や先輩が言う、こういうものだよ、は当てにならないと思っておくこと。
    (個人の運や才能や分野などが大きく影響を与えるので他人と同じ道にはならない)
  • 文系は3年でストレート卒業するのが普通だと思ってはいけない。

特にひとつめとふたつめの項目は重要です。

同じ年齢の就職した人と懐を比較してはいけません。そして、理系と比較してはいけません。

最後からみっつめ、論文を書いて本数を得ることが大切です。

悲しいことに、理系とは異なり、中身は何であれとにかく何本以上出しているみたいな部分でまず出願資格があるかどうかみたいなヤツもあります。

大変中身の薄い論文を沢山書いている方が通って、濃いものがあるけど数が足りてないからそもそも名乗りを挙げられないみたいなそういう悲しいことが起こりうるのです。

そして最後。文系は3年でストレートで出れると思ってはいけません。

オーバードクターしながら、非常勤の間は大学院に籍を置いて、常勤が決まったら卒業するくらいが普通です。

なぜなら、そうでないと学割が効かなくなって家計を圧迫するし、図書館が使えなくなったり、研究室が無くなったりします。

こういった意味でも、3年前に書いたのと同じ言葉を書きます。

「博士後期課程に進むというのは、人間をやめて博士という生き物になること」だよ。

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